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株式会社ワタミファーム 取締役副社長 木村敏晴
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スペシャルインタビュー

株式会社ワタミファーム 取締役副社長 木村敏晴

株式会社ワタミファーム 取締役副社長 木村敏晴


2000年、東京大学法学部を卒業後、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッドに入社。
戦略コンサルタントとして、通信、自動車、ファンドなどのクライアントに対して、成長戦略策定、中長期戦略立案、業務プロセス改善、提携・売却交渉、ビジネスデューデリジェンスなどのプロジェクトに従事。
その後、2008年にワタミ株式会社に転職。社長室 経営戦略担当部長、ワタミフードサービス株式会社 CFOなどを経て、現在は株式会社ワタミファーム取締役副社長としてご活躍中。

'09年 11月 株式会社ワタミファーム 取締役副社長 木村敏晴氏、弊社スタッフ 対談

これまでの木村氏のキャリア

『先ずは木村様のご経歴をお聞かせ頂けますか。』

2000年に大学を卒業し、ベイン・アンド・カンパニーに入社しました。大学在学中には、海外では冷戦終結、日本では年功序列の崩壊等々があり、価値観が大きく変わりつつあった頃に就職をしたと言えますね。

『学生時代に山一證券が破綻したかと思います。』

そうですね。その様な背景もあり、最初は官僚になることを考えました。しかし、ビジネスの方が、考え方が進んでいると思い、学生の頃、興味のある商社でインターンをしました。サークル活動の関係もあり、大手総合商社の海外支店で暫く働きました。その時の印象としては、しっかりした組織は自分には少し堅苦しいものだなと感じました。その印象や、その頃の風潮で外資系も良いかと思い、ベイン・アンド・カンパニーに入社しました。

『その頃にはコンサルタントを目指されていたのですか。』

そうですね。あまりしっかりは考えていませんでしたが、先輩の中でこの方は凄いなと思える人がコンサルタントにいたんですね。確固たるもの、違うなと思わせるものを持っていて、私もコンサルタントになれば技術が身につきそうだなと思いました。

『では、コンサルタントになられたのは技術を求めてということでしょうか。』

そうです。

『実際入られていかがでしたか。』

実際入ってみたところ大変でしたね。ベイン・アンド・カンパニーという会社は、外資系のクライアントが多くて、グローバルでは大きいのですが、当時日本ではまだまだ競合に押されていて、日本のフラグシップクライアントはあまりいなかったんですよ。一方外人のパートナーは結構いて、英語で仕事がてきなければダメだよという環境で、大変でした。仕事自体は海外企業の日本企業買収等が続いてあり、面白かったですね。仕事の多様性という面でも面白かったです。元々マッキンゼーで長くやられている方は「クライアントなんていくらでも取れるけど、面白いと思うものしかやらないよ」という様なことを仰っていました。(笑)
その一方で結構、がつがつしている外国人のパートナーもいて、バラエティーに富んだ環境でした。(笑) 一方、中間層は結構薄かったので、そのようなパートナーと色々な面白い仕事をさせてもらいました。

『ご入社の2000年頃と言うと、ちょうどコンサルティングという仕事が日本において定着してきた時代でしょうか。』

そうですね。確かに外資金融は新卒を結構とり始めていましたけれど、コンサルはまだまだメジャーな産業ではなかったですね。

コンサルティングの仕事をふりかえると、為になったことが多いのですが陥りやすいワナもあると思います。例えばきれいなパワーポイント資料を作ることや、きれいなモデリングに膨大な時間と労力を注ぎこむことです。これらのスキルは、「スキル」としては良いのですが、別にそれがそんなに本質的なことでは無いということですね。この様なスキルは、所詮自分より5歳位年下の人間にはすぐに抜かれてしまうものではないでしょうか。

コンサルタントとして習得できるスキルで二つ位本質的なものがあるかなと思うのですが、一つは経営者の視点を持てるということ。経営課題について、経営者は経営者で忙しいですから、そればかり考えている訳にはいきません。その一方でコンサルタントはそういうものをずっと考えていられるし、より幅広い視点から全体を見ることができます。

もう一つは、プロ意識がもてること。コンサルティングファームにはやはり厳しい環境があります。極端な話、所謂アップオアアウトですね。後から考えるとそれを社会人の早い段階で経験しておいて非常に良かったと思います。私も最初は学生気分が抜けなかったのか、最初のレビューで、「注意力が足りないから、生まれつきコンサルタントには向いていません。」などという冷たいレビューが英語で来ました。(笑)

この様なレビューが2回続いたらアウトです。さすがに1年で辞めたらかっこ悪いなと思い、頑張りました。

あとはベイン・アンド・カンパニーの場合、98、99年の金融危機の時に、ソウルのオフィスに優秀な学生がこぞって入って来ていました。ソウルのオフィスにとても優秀な人が揃っていた訳です。そういう人達が2000年過ぎてから、結構余っていて、東京は近いからということで、通訳・ホテル付きで、一日何万円かのコストをかけてでも日本のクライアントにアサインしようという状況が続いていました。私よりも高いコストが掛かり、且つ日本語も喋ることができないのですが、こっちの方が優秀だからこっち入れようか、それとも私をアサインしようとか、その様な状況が暫く続きました。「世の中厳しいな」、「自分を売っていかないと仕事をもらえない」という世の中の厳しさを経験させてもらいました。自分で起業すればもっと厳しいのでしょうが・・・。

つまるところコンサルティングの経験から得たものは、自分がきちんといつもいつも成果が出せるということを証明していないと仕事をもらえないという感覚と経営的な視点ですね。それはとても有難かったと思っています。

では、経営コンサルタントって経営の先生みたいだから経営ができるかというと、殆どの人ができないと思います。私も全然できていなくて、悩みながら、許してもらいながら、という感じで今修行しています。何かと言うと何をすべきかは見えるかも知れないけど、実際やるという所が弱いということです。リーダーシップとか、人を動機付けて引っ張っていくというスキルが、全然鍛えられて無いですよね、改めて感じます。

『その辺りはコンサルティングをされている中で、具体的にはどういうところで気づかれたのでしょうか。』

これらの点はワタミに移ってから改めて気付きました。

『実際コンサルティングをされていた時はどの様に思われていたのですか?』

経営ができるつもりでいました。(笑)
コンサルティングで結果主義とかインプリメンテーション重視とか言いますけれど、やるべきことを決め、提案しておしまいと言うのと、実際実行に移すのとは全然違うなということを感じています。
実行するのはめちゃくちゃ大変だなというのを、実感を持ってわかっていなかったですよね。コンサルタントはドロップアウトがあるので、必死に働きますけれど、通常、どう動機づけるかが本当に重要だとあらためて認識しています。

転職を考えた理由について

『コンサルからの転職を考えられたのはどういったきっかけだったのでしょうか。』

一つは30歳になるということですね。人生は一回しかありません。ずっとコンサルティングをやるのもつまらないかなと考え始めました。

あとは、偉そうな、言い方かもしれませんけれど、「クライアントの企業価値を上げる」というミッションに疑問が浮かんだのです。一つ非常に評価を受けたプロジェクトがあったりエコノミックバリュー的にはすごいのが出て、コンサル冥利に尽きるような立場だったのですが、そのプロジェクトはとりわけ仕事としては面白くなかった・・・。
当たり前の数字をはじいて、論理的に正しく進めていたらこうなったというだけなんですね。コンサルタントとしてクライアントにしっかりとした付加価値を提供し、非常に評価されたのにあまり面白くなかった。それでその後結構悩みました。自分は、何がやりたいんだろうと。
因みにその時は通信業界のクライアントだったのですが、何故面白くなかったのだろうということをじっくり考え、徐々に見えてきたことは、私が便利なものってあまり好きじゃないということでした。通信会社をコンサルティングしている割には、いまだにiモードとか使いこなしていませんしね。(笑)

『意外ですね。携帯でメールとかは使われないんですか?』

携帯でメールも、なるべく「了解」と返信するか、かけ直します。(笑)
夕方、夕立が降ってきた時を例にとりましょう。私は小学生の時、電車で通っていたのですが、親が傘を持って待っていてくれたりした訳です。そういうのって、幸せですよね。でも、携帯があって、「はい、48分に電車着くよ」ってメール送って、来てもらったら、親に来てもらった感激はだいぶ薄いと思うんですね。そういう感覚、感性を大切にしたいんです。エコノミックバリューではあまり心が動かないんだろうなと思いまして。

『もっと人のつながりというか・・・。』

うーん、人のつながりというか、何でもいいのですけれど、自分が本当にワクワクできる事業をやりたいなと思いました。
それが、私にとっては農業か電気自動車でした。両方とも世の為になるし、今、どちらも近い将来大きな変化がありそうな分、面白い業界かなと思いました。

アメリカの電池のベンチャーだとか、中国の自動車会社で電気自動車を本気でやろうとしているところだとか、幾つか応募しました。ただなかなか縁がなかったんです。その後やはり転職しようと思い、農業をやっているワタミをまわったところ、渡邉美樹氏に出会い、この人すごいなと思ってワタミに仲間入りした次第です。

現在の会社概要と現職を選んだ理由について

『ワタミとの最初の接点やアプローチをしたきっかけは何ですか。』

農業をやっている会社を調べていて、ワタミという会社があるというのを知ったのがきっかけです。最初に面接して頂いたのが、農業部門の当時の社長です。その時、「渡邉と会ってみる?」って言ってもらいました。

『ワタミはコンサル的な視点で見てどの様な会社でしたか?』

そうですね。渡邉との面談(面接)時は、渡邉さん自身がいなくなったらまわらないでしょうねというような経営の話をしました。ベースのところは非常に共感できましたね。価値観とか、何の為に働くのかとか、何故この事業をやっているのかなどの点は非常に共感しました。

『すごいビジョンのある方ですよね。』

そうですね。そこは本当に嘘が無いというか、ぶれないですね。入社後もその様に感じます。 例えば、M&Aを考える時、普通は先ず金額をはじいちゃうじゃないですか、いくらだったら買えそうで、どの位キャッシュフローが出て、だからどの位儲かるとか。
でも渡邉は、本当にこの事業をやりたいのか、「一人でも多くの方にありがとうがもらえるのか」を考えるんですね。自分達がやったら、人を、お客さまを幸せにできるのかというところがイメージできた時こそ買いたいと思うのですね。多少目先損しても、そんなことはもうどうでも良いと。本当に自分達がやりたい事業なのかということがキーポイントです。これは非常に本質的なポイントだなと思いました。先程言ったようなコンサルタントとして色々なスライドを作るとか、きちんとモデリングするとかいうのは、極端な話そのうち機械がやってくれることになるのでしょうから・・・。そういうことよりは何の為に自分達は働いているのだろうということを頭に入れながら、真の意味で経営判断に貢献する仕事をコンサルタントの人がどんどんやったら良いと思います。

私自身非常に不完全な人間ながら、不遜にも今の立場で仕事をやってもバチがあたらないかもと思うのは、日本の社会はまだまだ自分の意見を言う人がいないと思うからなのです。一方、コンサルタントの人は、正論を言うことが自分にとって大切だというスタンスで仕事ができる人って結構いると思うんですね。なので、コンサルタントの人が、コンサルティング以外の分野に出て来る必要があるなと思うのです。これから先、団塊の世代が抜けていく時代です。この世代の多くの素晴らしいリーダーの方々が今後いなくなることを考えると、一段とその様に思いますね。

入社後の仕事内容〜コンサルタントの経験が活かせたこと、活かせず困難にぶち当たったこと〜

『入られてからはどういうポジションで仕事をされたのですか。』

最初は経営戦略スタッフと仕事をしました。その後、事業会社のフードサービス、で外食の管理部門、本部機能のところに異動しました。当時フードサービスの社長は30代の生え抜きの人で、その後、現在の社長に変わったのですが、前社長と一緒に外食に携わってました。

『フードサービスの時はどういうことをされていたのですか。』

フードサービスの時は様々な判断に関することをやっていました。どこへ出店するか、どこへ展開するか、という事を、数字的な裏づけを以って決めました。「人」が財産の会社なので、人事に関するところが大切と考え、採用・教育・評価に関するところもやりました。一通りのことをやりましたが、一番拘ったのは会議の運営の仕方です。
ワタミの会議というと、一人座長がいて、座長が出席者に対し、「君たちちゃんとやっているか」と突っ込み、「それじゃだめだ」という様な会議が主流でした。私はこういう会議を違う会議にしていくには、参加者に最初に一言ずつ言ってもらうとか、それぞれに思ったことをポストイットに書いてもらい、書いてあることを喋ってもらう等々の工夫をしました。その様なプロデュースをワクワクしながらやっていました。

『人の意識改革の様なことをやられていた訳ですね。』

そうです。しかし、私はその様なことに関してはずぶの素人です。前職の知識や経験を活かすことができたかと言うと、全然そうではありません。こういうのはブディック系のコンサルティングファームに色々教えてもらいながら仕事を進めました。

今の戦略系コンサルも、論理的に考え何かをアウトプットするというのは非常に強いのですが、人が何故働くかとか、そういう部分までふまえているかというと多分そうではありませんね。ですから、組織の活性化に関しては、私は外資系のトップファームにお金を払う気持ちにはなりません。組織の活性化もやるという看板を掲げてはいますが・・・。

『その違いと言うのはどういうところにあるとお考えですか。』

コンサルティングファームは、ミーシーとか、ロジックツリーとか、モデリングとか、数字の世界は非常に強いし、そこばかり磨いているかもしれないけれど、それは本当の意味で全体像ではないと思います。 もっと心理学的なところを考えないといけないと思います。儲かるかもしれないけれども、みんなが元気にならないことはやらないだろうし、儲からなくてもみんなが元気になることはやった方がいいだろうし、という視点で社長は判断をするでしょう。

『木村さんが実際にご入社されて受けたインパクトというのは、実際の実行と言いますか、現場感のリアリティなんでしょうか。』

そうですね。

別の話になりますけれども、コンサルタントってクライアント企業の中に入り込むことが大変で、クライアントと心通じるとうれしいと言う人が多いと思います。しかし元コンサルが事業会社に入って、周囲の人と心通うっていうのはもっとそれよりハードルが高いですね。でもそれができたらとても楽しいですよね。
私の場合だったら、最初は「何なの」っていうのが、当然ありますよね。どうせコンサルタントはいなくなる人だから、ある意味気安く仲良くできる訳ですよ。だけど、みんなの前に渡邉美樹氏に意見したっていうところで、「なんか、そういうことがあったらしいよ」って話題になり、社員旅行で、特攻隊長みたいな人がビールかけに来てくれて。(笑)
それを嫌がらず楽しみ、そういう中で仲良くなれたのですけれど。「俺は元コンサルタントだ」ってすましていたら、事業会社では成功できないと思います。
何をすべきかを考えとして短時間で導き出すのは得意かもしれないけれど、実際実行に移そうとすると、みんなが「よしやろう。」と思わないとできなくて難しい。コンサルタント出身者は、そこをどうすればよいのかという点が実は弱いというか、欠けていると思うのです。

『木村様の中でどうやってそういう風に変えていかれたのですか?』

変わらずを得ないですよね。私が「こうしなきゃダメだ」と言って、「よし、そうしよう」って社長が言ったとしますね。そこで私は「よし、じゃあ、どうやってやろうかな」ということに考えを集中する訳です。昔は何をするべきかということに殆どの時間を割いていましたが・・・。やるからには色々な人がやろうと思わなければいけない。どうやったら人が動くか。絶対にやった方が良いことが分かっていても、自然にそこに壁ができてしまうのです。

『なるほど。「どうやるか」に考えを集中された訳ですね?』

そうです。

『一番難しかったことは何でしょうか。』

レバレッジがきかないことでしょうか。時間が限られている中で、一人一人信頼関係を築いていくことは非常に難しかったですね。入社したばかりで、色々な人に信頼してもらうことは少しずつしかできませんから。何をすべきかを決めることは与えられた時間でパッとやればいいですけれど、みんなを巻き込んでやる為には本当に徐々にしか進みません。それを面倒くさがらずにやりきることの大切さを痛感しています。
皆さんには知られていないと思うのですが、ワタミのキャラクターは体の重い亀なんですよ。一歩一歩しっかりやる者が結局強いということですね。

『反発とか抵抗があったことはありますか。』

抵抗ではないですけれど、例えば情報をもらうのに苦労するというような事はあります。ラインを越えて関わろうとしても、「何で上司じゃないのに、情報くれとか言われなきゃいけないんだ。」ということもあります。彼らとしてみるとある意味当然のことですが。上司以外の要求を受け始めたら、キリがないというのもありますからね。

『そういう点は一つ一つクリアして行かれたのですね。』

そうです。

現役コンサルタントに伝えたいこと

現在コンサルタントとして働いている方に伝えたいのは、想いがあること、使命感を持って実現する事は何にも変えがたいという事です。
私自身、給与の額ではなく、「自分が何をやりたいのか」という気持ちでこだわって選べたので、とても幸せです。

この様な、何もかもふり捨ててでもやってみたい、そういう転職をして欲しいですね。それがないと、先程も言いましたけれども、例えば色々な人を巻き込んでいくというようなことはできないのではないでしょうか。事業と言うのはとても地道なことだから、そこで面倒くさくなってしまったら勿体無いと思うんですよね。

死ぬ時に、「やって良かったな」と思うことができそうなイメージを持った転職じゃないと、結局はうまく行かないのではないでしょうか。「事業会社で、給料下げられてもここまでだな」とか、「この分野でこういう風にレジメに書けて、次はこうだな」とか、それではあまりうまくいかないでしょうね。スティーブ・ジョブズの様な有能な人で、「自分はこの仕事が楽しいから1ドルでもやりたい」という人が現実にいる中で自分がどうするのかを考え、この仕事ができたら幸せという仕事を選ぶべきでしょうね。

『そういう転職は探すのが難しいのでしょうか。』

その様なことはないと思います。そもそもその様な仕事を探していないのではないでしょうか。私も初めの頃はそういう探し方をしていなかったですね。自分がもっとワクワク活躍できる場所があるはずだって思っていて、受け身のスタンスで転職活動をしていました。もしかしたら心のどこかで、会社に対する不満とか、そういう気持ちが残っていた時もあり、その時転職をしていたらうまくいっていなかったでしょう。最後、ポーンと決められたのは、ワクワクするものをやろうと思えた時でした。

『ワクワクするものが見えてきたのは何かきっかけがあるのでしょうか。』

死生観じゃないでしょうか。自分は必ず死ぬのと、30歳という節目でしょうか。この他に子供ができたりとか、色々ありますけれど・・・。

『社会起業家とか、コンサルタントからその様な分野へ転職する方が増えていますね。』

そうですね。共通して言えることは大切なことは、自分が何に一番心を動かされるかと言う点ですね。
そういえば、私、1週間座禅とかもやりましたよ。

『それはワタミに入社されてからですか。』

いいえ、ベインでイギリスに行く前です。ベインを辞めようと思ったのですけれども、なかなか辞めることができなくて・・・。
先程言いましたけれど、私は便利なものが本質的にあまり好きではないので、全てを投げ打って自分と向き合ったら、何が起こるのかなという興味がありました。今の世の中はインターネットとか、情報が溢れているじゃないですか。そういうのをうるさいと思うタイプということもあり、座禅の様なことがやりたくなったのでしょう。座禅をやって、転職の決意が深まったというのはあると思います。やっぱり本当にやりたい事業を選び転職をしようという決意ですね。

『座禅でそれが見えてきたということでしょうか?』

座禅では謙虚になっただけですね。何をやろうというのは見えてきませんでしたが、もっと認められたいとか、社会からもっとちやほやされたいとか、そういうどこかにある自分の潜在意識から解放されたと思います。また親への感謝の気持ちなども生まれてきました。そういう中でご先祖様からも喜んでいただけるような仕事をした方が良いのだろうなという気持ちになりました。

『木村様が今後どういった形でやりたいことを目指されているのか、それから、コンサルタントして活躍されている方に、木村様が実際に転職されてから活きてきたと思われるコンサルタントのスキルとか、メッセージがあれば、お願いします。』

一つ目に関して言うと、先ずは農業をやります。やったことがないので、大風呂敷を広げるつもりはありませんが、少なくとも、例えば日本が石油の輸入が止まって、化学肥料とかがなくなったとしても自分は結構食べていけるよと、それだけの腕はあるというところに辿り着きたいと思っています。それにはかなりの時間がかかると思いますが・・・。でもそうなったら、色々なことができそうじゃないですか。「それっていいよね」っていう若い人がいると思います。

一方で、農業業界は、色々と難しい問題があるので、そこには正論で切り込んでいきたいと思っていますけれども、それにはまず、腕が上がっていないと格好悪いので、まずはそれができるようになりたいなと思っています。
一方で、仕事は本当に人づくりが大切で、レバレッジが効かないという話をしましたが、それはずっとやっていきたいですよね。できれば、人に相談されたいし、あの人に相談すると有意義だよねという存在であり続けたいです。でもそこって、結局は一対一なので、こちらとしても良かったなって思えるのは、たぶん、年間に5人とか10人とかという規模でしかできないでしょうけれど、それは一生続けていきたいと思っています。

『二つ目におっしゃった、「人のために」ということに関して、具体的な活動はされていますか。』

リーダーシップのあり方というのは、色々なタイプがあると思いますが、私自身のタイプが上司に色々言われるのが好きではなかったんです。「あなたのことを信じているから任せておく」みたいなタイプが好きでね。だめなところはこうした方が良いよって、インプットをもらうのはうれしいですが、指示を受けるのは嫌いなタイプだったので。私もそれぞれに最低限、これだけのことはやらないと仕事をしたことにならないよっていうことを簡単には言います。直属の部下の7人には、年間に一人一つのことしか言いません。「一つのことしか言ってないけれど、忘れてない?」みたいなことは言いますけれども・・・。(笑)
いずれにせよ、組織のこのポジションにいるからできることではなくて、部下には相談は、組織を超えてするべき人とやれと言っています。例えば、「その提案は店長の何人かとヒアリングしてからじゃないとできないよね」とか、そういう話を散々しているわけですよ。
同じように私も色々なことを段取りし、組み立て、選択肢を考え、そういうのを整理するのは得意なので、いつでも相談しに来てと言っていて、実際相談来てもらえるとうれしいですね。それは組織のこのポジションにいるからやっていることではなくて、農場にいても連絡が来たらうれしいですよね。
また、今コンサルタントをされている方へのメッセージですが、一番は、コンサルタントは今の日本社会においてすごく重要な人達だと思うので頑張って下さいということです。正論で押す力は日本は弱いし、ホワイトカラーの生産性が低いと思います。且つ、今日本がものづくりの国でもなくなってきている中で、ホワイトカラーの生産性を上げなくてはいけない。そこのポテンシャルを持っている人達はコンサルタントの中にいると思うんですよね。若いうちから色々な問題を全体感及び現場感を持って組み立てるというトレーニングをされているはずなので、それは非常に貴重なアセットです。ただ、すぐ社長が出来るかといえば、出来ない人が多い。それがコンサルタントの弱さだと思います。例えば、あなたに100人部下を預けたら、その人達が元気になってついていくのですか、という点は弱いと思うんですよね。それはできないし、コンサルタントのうちはトレーニングできないから、そこは自分が弱い点だということを早く認識した上で、事業会社に来た方が良いのではないかと思いますね。
コンサルタントは「判断」の先生であるかもしれないけれど、「実行」するということができないから、実行しないままの人生ならそれはそれで良いかもしれないけれども、それだと、視点が一段低いままです。経営者と言うのは人の気持ちを考え、バランスを取っていくので、その次元に行くには事業会社にリーダーシップを勉強すべきと思います。そこは勉強させてもらうのだから、お給料をここまでは下さいなどという事は忘れとにかく、本当に自分が熱くなれる転職をした方が良いと思います。
また、一方で、何が正論か、何が正しいかというところの意見を伝える勇気というのは、唯一自分の「ここだけは負けない」というところなので、それが無いうちはコンサルタントを辞めない方が良いし、それは辞めた後も変に染まる必要は無くて、そこだけは自信を持っていたほうがいいと思います。

『事業会社に行きたいという方は多いのですが、給与面での問題や、具体的に事業会社の中で何をやるんですかと聞くと、あまりイメージできていない。 ただ、経験していないので、経験した方がいいのかなと、軸がそこまで定まっている訳ではなく、興味を持てるところで、考えたり、やはりキャリアの一環として考えていらっしゃる方が多いので、そうなると給与面をこだわったりなど、確かにそれだと転職できないんですよね。』

起業するか、事業会社に行くか、迷いながら・・・というのであれば、上手くいく確率が高いでしょうね。
こういうことがやりたいんだけれども、自分で起業する方が早いか、すでにある事業を使った方が早いか・・・のように。

『なるほど。起業するという考えがある時点で、それなりにリスクを考えて覚悟の上でということですね。

特にコンサルタントもマネジャークラスになると給与の面で相当開きがでますし、年齢も上がってしまいますから、更に選択肢が狭まってしまうとか、そういうのもありますよね。
以前、A.T.カーニーの代表だった安藤さんという方にインタビューをさせていただいたことがあるのですが、同様なことをおっしゃってましたね。
マネジャー手前で事業会社に飛び込んでいくような経験をしないとだめですよね・・・みたいな。』


最近、巨額宝くじを、職場仲間が共同で買って、当たって、一人当たり何億分配ということになった際、一斉にやめるみたいな記事があって、すごく違和感を感じ、悲しいものだなと思いました。海外の話ではありますが、確か警察官とか、そういう職種の人だった。
要は、お金のために働いているというのが如実に示されてしまったわけですが、仕事って本来そういうものではなく、本当に、使命感とか楽しいことを夢中になるというのがあるべき姿で、そういう状態にまでなれた時、本質的な価値が必ず出るから結果的に生活の心配はいらない。
コンサルの人は、無駄遣いをしていなければ蓄財もできるし、能力もあるのだから食べるのに困るところまでは基本的にはならない。だから、勇気をもって、本当に自分がやりがいを感じられるところに、すべてを捨ててチャレンジするとよいのでは、と思います。

楽しい仕事は、たくさんの人がやりたがるから給与が高いわけがないというのは単純な市場原理です。実際、さっき言った通りスティーブジョブスみたいな、ただでやってしまう能力の高い経営者が出てきている。成長可能性のある事業の経営なんて、ワクワクできる分たくさんの人がアプライするはずで、それこそ団塊世代からジョブスのようなノリの人が出てきかねない。そことの競争になる。だから給与を求めていたらチャンスは回ってこないと思います。
是非、自分が熱くなれる転職をして欲しいですね。

『本日は大変ありがとうございました。』


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